rue
(ただ遠く)
ふきだまった闇の底で、
双子が円を描く。
むせぶ草の香りに、
虫たちはどこかへ行ってしまった。
‥それでも、もし君がまぶしさを感じたなら、
もう一度生まれてもいいとすら思える。
浅い眠り。
夕立。
貝殻。
蝉時雨。
風鈴。
常夜灯。
西瓜。
手持ち花火。
べたつく手を残して。
朝もやの中。
あの夏が遠い。
fennel
通路の 痩せた 猫
茜の 波に 太陽
潮風
渇いた 土に 松
鞄の 中の 砂
幻影一つ
もうすぐ夜が来る
夜が来る
olive
世界は沈黙した。
近視眼の賢い子供。
地の欝にも似通う灰。
これほど言葉の軽い時代はかつてない。
それでも紡がなければならない、か?
lotus
風の音、草の香。
日々疎ましく感じる諸々の事柄さえ 晴れやかならずも物腰穏やかな春の日。
緩やかに。
僅かでも。定着した時の間に。
ささやかにも、「私の時だ」と 胸を張って言え 緩め 意味から見落とされた
見晴らしのいい地点があるのだとすれば 少し 日をよける木によりかかり
形を残し融解する砂糖みたいに 檻から水面へと喘ぐ回遊魚みたいに
彼らの時間をもって捉らえ、佇んでもいいかい?
...they overflow...
眼差し
総ての眼差し。
混在し、交差し、ぶつかり、明滅し、重なる。
「見なくてもいいものが、あまりに多すぎる」
「いや、君の絶望は、見なくてはいけないものの多さだ」
ある視点。
総ての眼差し。
総体としての自我。
それは溢れている。
anise
ここには全てがある。
失い、作り。君が想うだけのもの。
雨 風 受け 陽に 向かい 笑い くち。
時、空、軋み 病み まどろみ 経ち。
虚空を切る 一陣の風。
くぼみにはまる。
場所、場所に。時、時に。
ちぎれ飛ぶ雲。ムクドリが鳴く。
空の青。
風はどこから吹くの?ただ流動する今と共に。
陽光は僕らの周りを取り囲んで。すりガラスの向こうへと霞んで行ってしまう。
鳥は秋風に惑い、望みの地を求める。月潮満ち欠け、土匂う宵。
acacia
日が昇る。露をたたえ。
黒点落ち、東にアケビ。
駆けずにいれば、ふわり。
透明な過去に包括される。
(回転、苦い草、光る球体、雪解け、抜ける空、温度、甘い、逃走)
vik.
蔓を巻き 咽せる夏草 君 絶えて 我が心共 干上がる陽炎
infa
暮れゆく季節に脚をとめる。
君はまたいつも通り、慌ただしくドアを開けて行くけど。
冷淡な風を体で吸う。
懐かしさを伴って、生物は土に還る。
静寂の時。
張り詰めた糸の様な脆弱な時。
凍結の中で蠢く母に似た光り。放物線を描き、ただひたすらに春の訪れを待っている。
cicro
春まだ遠い路。
空からは垂直に木々が垂れ下がる。
まばゆく、たおやかな。
動く。歌う。言葉はなくとも。
流れる。
君の景色。皆一様に。皆一様に。
雪まだ溶けぬ路。
陽光と共に。消尽の内に。
鬱積する現在。代償と先送り。
夜の泉は松脂の匂い。
踊りながら裸体は、あらゆる意識から逃走する。
それは普遍的皮膚感覚の極限。
笑い合う。生命の狂おしい内奥において。
太陽と海。
愛に満ちた、君と僕の不在の露呈。
唯一の願いは共に知る事。
さもなくば墓標を建てよう。
生まれくる子供たちの為に。
sea#11
擂鉢の底のような生活。
君さえいればいいとは僕は言えない。
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